2011年2月12日土曜日

17.信頼の生まれ方

チームワークや信頼関係というと、長く一緒に働いている者同士において、自然に生まれてくるもの、自然に培われていくことのようにも思えますが、このようなことが期待できない場合もあります。仕事の性質上、時間をかけて自然にということが成り立たない世界があります。専門性の高い者同士が、その場、その場で一時的に集まり、目標を達成し、そして解散するような仕事です。

このような仕事においては、初対面の者同士が、一瞬で、相手とのコミュニケーションをとり、できるかぎりの関係を築くことが求められます。簡単な挨拶や自己紹介のようなことでさえも、ここでは、非常に重要になってきます。

少し古い話ですが、以前、イベント関係の仕事に関わっていたことがありました。このとき、決められた時間に会場に行くと、本日限りの付き合いでしかない様々な立場の関係者同士が、必ずキチンと挨拶をしていたのを良く見かけました。挨拶が基本だと言わんばかりの光景でした。今、考えれば、これも、名前も顔も知らないもの同士が一日限りの仕事をスムーズに行うための重要な技なのだと思います。

信頼関係は、時間が勝手に築いてくれるものではありません。日々の行動や経験、組織の共通の価値観、専門性の高い物同士の敬意、ちょっとした言葉のやり取り、厳しい訓練や乗り越えた危機的な状況が、この信頼の基盤を少しずつ築いていくのです。

ほんの一日や一回だけの仕事であっても、仕事にはお互いの信頼というものが必要になります。少なくともここでは、信頼関係とまでは行かなくても、その瞬間にできるかぎりの心のつながりをつくることが求められます。そして、そのためには、ちょっとした挨拶や会話ですら重要な意味をもつことになります。

毎回違うメンバーでフライトをするため、ブリーフィングでの情報や意識の共有化は必須ですし、ここから生まれる雰囲気でその日のフライトが左右されるといっても過言ではありません。チームワークでひとつのフライトを創りあげるCAにとって、ブリーフィングの位置づけはとても大きいのです。- 旅客機 CA(キャビンアテンダント) - (P38)
里岡美津奈 (2009) “スーパーCAの仕事術” メディアファクトリー