2010年10月24日日曜日

13.メンタルリハーサル

危機的状況への対処法として、事前にどう行動すべきかを決めておく必要がありますが、これが実際の場面においても、確実に実行できなければ意味がありません。こうすればいいと頭では分かっていても、実際にやってみたら、やれなかったというわけには行きません。

オフィスビルの火災や地震を想定して、避難訓練を行うことはありますが、実際の場面でどこまで何ができるのか疑問なところもあります。本当に発生してしまった時には、煙が蔓延するということだけでなく、つい先程までのオフィスの雰囲気とは全く別の世界になってしまうはずです。慌てた人たちでフロアや階段は埋め尽くされ、いつも普通にやっている行動ですら、できなくなってしまいます。

非常事態においても、決められた行動を迅速にとるためには、より現実的な場面を設定したリハーサルを行うことが大切です。このリハーサルは、行動の手順ということだけなく、恐怖や不安の中においても実行できる、精神的な面でのリハーサルでかければなりません。

品質に問題のある商品が市場に出回ったと分かった時の対応、システム障害を一刻も早く復旧するための対応、新たな脅威である新型インフルエンザの企業内での蔓延防止などといったことへの対応方法について関心が集まっていますが、対応を迅速に行うような訓練が実際になされているかと言われると、必ずしもそうではありません。

時間や費用の制約はありますが、何か望まない事態が起こったときに受けるダメージと比較し、本当の意味で、その時、行動できるように準備しておかなければなりません。少なくとも、事が起こった時の状態をリアルにイメージした上で、対応する訓練が必要となります。「あれっ、どうすればいいんだっけ」では、すまない時が来るはずです。

「自分の取るべき行動をビジュアライズ(その時の光景と自分の体の動きを頭の中でくっきりと思いうかべること)させ、心の中で前もってリハーサル(予行演習)を行っておくのです。これは「メンタルリハーサル」とも呼ばれ、スポーツ選手のトレーニングや軍事訓練や医学の治療など、さまざまな分野で用いられており、有効性が証明されています。- 元サンディエゴ市警 警察官 -(P26)」
Sanford Strong (1997) “Strong on Defense (凶悪犯から身を守る本)” Atria (毎日新聞社)



【参考】
Mental Rehearsal (メンタル・リハーサル)